「無理」と言う前にまず分析する。現場監督20年超の仕事の仕方

「無理と言う前にまず分析する」。そう語るのは、現場監督歴20年以上の松井さんだ。最近任されたのは、320キロリットルの油を2日間で処理するという、通常のやり方では工期内に施工が不可能な工事。「松井さんしかいないから」と託されたその案件を、あるアプローチで解決してみせた。品質管理から現場監督へとキャリアを重ね、今では年間30件の工事を行う松井さんに、仕事の仕方を聞いた。

年間30件の配管工事を動かす

Q:まず、松井さんが現在担当されているお仕事を教えてください。

松井:現在はあるお客様を担当していて、年間30件ほどの配管工事の工程管理と、工事プランニングをしています。工事にはお客様の希望で時期が決まっているものと、比較的融通がきくものがある。それを組み合わせて、限られた人数で1年間を回せるように工程を組んでいます。工事でより高品質のものを納められるよう、計画・立案しています。

Q:チームのマネジメントもされているんですか?

松井:はい。私を含め5名の監督でチームを組んでいるのですが、その中で仕事の分担をしています。難しい工事には経験のある監督を割り当てたり、まとまった工事には2人以上の体制にしたりします。各工事の内容を見て判断しています。

机より現場で動く仕事がしたかった

Q:松井さんが日本化工機に入社された経緯を教えてください。

松井:大学では機械工学を専攻していました。学部的には設計職の募集が7〜8割を占めていて、CADを使った仕事に就く人が多かったんです。でも自分の中では、机に座ってずっと作業するような仕事が一生の仕事になるイメージが持てなくて。CADが嫌いだったわけじゃないんですけど、選択肢から外していきました。

そんな中で、生産技術や施工管理といった仕事に興味がありました。たまたま日本化工機の「工務技術」という公募を見つけたんです。内容を聞いてみると、施工管理や品質管理、効率性を上げる仕事だと。それで「ここで働きたい」と思いました。

人と関わるほど、知識が増えていった

Q:入社してからは、どのようなキャリアを歩んでこられたんですか?

松井:入社して最初の2年間は品質検査や内作管理の仕事をしていました。製作したものが寸法通りにできているか検査したり、納期を管理したり。1年目は先輩に教えてもらいながら、2年目からは自分で検査できるようになっていきました。

3年目くらいから現場での施工管理も経験するようになり、4年目からは本格的に現場での監督業務に移りました。

Q:品質管理から現場監督への異動は、ご自身としてはどう感じましたか?

松井:品質管理だけだと関われる範囲に限りがあるなと感じていて「現場に出ることで今後の仕事が広がっていくのでは」という思いはありました。

一番大きかったのは、対峙する相手が変わったことですね。工場にいればプラントメーカーの方と直接話す機会はほとんどありませんでしたが、現場に出るとその方たちと様々な会話ができる。触れ合う人数が増えていくことで、知識も増えていったなと思います。

幸い携わっていただいた方にもすごく親切にしていただいた事もあり、自分には現場の方が向いているのかなと思うようになりましたね。

「無理」と言う前に、まず分析する

Q:これまでで特に印象に残っている仕事を教えてください。

松井:最近で言うと、今までうちがやったことのないタイプの工事を任された時のことですね。お客様から「この工事ってどのように施工したら良いと思う?」と言われて始まった案件でした。

この工事で大変だった事は、まず工期内に納めるのが物理的に難しかった。配管の中には油が通っていて、工事の前にその油を処理しないといけないんです。その時の油の量は160キロリットル×2系統で合計320キロリットルでした。バキューム車1台で8キロリットルしか回収できないので、40台分。それを2日間でやるのは普通に考えたら不可能なんですよね。

Q:それをどのように解決したんですか?

松井:まず「工期内に納めるためには通常のやり方では無理」という前提から異なる方法での施工が必要でした。石油の現場にはタンクがあるので、その油を直接タンクに戻せないかと提案したんです。

ただ、油をタンクに戻すためには間に様々な機械を入れないといけない。お客様やうちの設計、職人さんと一緒に、どの配管を使えばタンクまで繋げられるか、必要な機械は何か、ということを一つずつ洗い出していきました。最終的に、工期内に収まる仕組みを作り上げることができました。

Q:難しい依頼が来た時、松井さんはどう向き合うんですか?

松井:私は「石橋はどこまでも叩いて渡りたいタイプ」なんです。推敲に推敲を重ねて、自分の中でシミュレーションして、不可能なポイントがないか徹底的に確認する。

大きな工事でも分割して細かく見ていけば、どこが厳しいのか見えてくる。時間なのか、技術なのか、人なのか。工事をやる前に問題点は解決できると思っているので、難しい案件ほど時間をもらって、何回でも考えます。

そしていきなり「無理」とは言いたくはないですね。無理かどうかは、しっかりと分析してから判断する。できる道を見逃していたら困りますから。

「お宅に頼んでよかった」という一言が本当に嬉しかった

Q:仕事をしていて、一番やりがいを感じる瞬間は?

松井:客先担当の方から「お宅に頼んで良かった」と言われた時ですね。何度か言ってもらったことがあるのですが、最初にそれを言われた時は本当に嬉しかった。

特に印象に残っているのは、複雑な条件が絡み合った工事です。例えば「5本のラインを交換する」「工期は1ヶ月」「でも同時に止められるのは1本だけ」といった制約がある。さらに、お客様側で配管の中を安全な状態にする期間、うちの工事期間、復旧期間……それぞれに日数の制限がある。

それを全部組み合わせて「この工程でどうでしょう」と提案して、実際にその通りに完遂できた時がありました。チーム全員で力を合わせたことで、担当の方からも「この条件を理解してくれてありがとう」と言ってもらえて。工事担当の方からは心から褒めていただけました。

夢をかなえてくれるスーパー職人さんたち

Q:そういった難しい工事を実現できるのは周りの方の力も大きいですか?

松井:私はプランニングする立場で実行するのはすごい職人さんたち。「こうやってやりたいんだけど、やれますか」と聞いた時に「いけるんじゃない」と言ってくれる。私の夢を叶えてくれる存在なんですよね。

今一緒にやっている職人さんは本当に賢くて、すごいなと思います。プランニング側と職人さんの力、両方が噛み合って初めて実現できる。だからこそ、職人さんへのリスペクトは常に持っています。

誰が抜けても回る組織をつくる

Q:チームをまとめる立場として、育成で意識していることはありますか?

松井:普段からチームで情報共有を徹底しています。お客様との打ち合わせや工程打ち合わせにも参加してもらうようにしてます。そうすれば1人ひとりが他の現場や仕事をバックアップできる。それに、会議に参加することで「ああ、こんなことを話してるんだ」とステップアップにもつながる。興味を示す子もいれば示さない子もいますけど、そういう機会を作ることが大事だと思っています。

情報共有をしっかり行っていれば、自分が間違えた時も指摘してもらえる。誰かが「それっておかしいんじゃない」と言ってくれることを期待しながらやっています。

Q:チームに伝え続けていることはありますか?

松井:「少なくとも2ヶ月先まで頭に入れながら仕事してください」ということは常に言っています。2ヶ月先にやることって実はもう今取りかからないといけないことが多いんですよね。

「一つ終わったから次はこれ」と渡すのではなく、次にやらなければならないことを常に見通せる状態を作る。もし自分の手が空いているなら、3ヶ月後、4ヶ月後の仕事に頭をシフトさせてみる。そういう習慣をチームに根付かせるようにしています。

文句を言いつつ、一生懸命やってくれる仲間

Q:今のチームの雰囲気を教えてください。

松井:チームの好きなところは、文句を言いながらでも一生懸命やってくれること。「あなたのせいで忙しいんやで」って言われるんですけど(笑)、みんなワイワイガヤガヤやれている。そこがすごくいいなと思います。

Q:チームの課題はありますか?

松井:得意不得意の差が大きいことですね。工程管理や人と話すのは得意だけど技術的なことが弱いメンバー、逆に技術は素晴らしいけど人と接するのが苦手なメンバー、それぞれいます。

私たちの仕事はお客様と話す場面が多いので、ある程度のことを網羅していないと評価されにくい。だから弱点はある程度克服してほしいなと思っています。

ただ、今は2人×2人のチーム体制にしていて、忙しい方にもう一方から応援を出すようにしています。お互いにケアし合える状態にはなっているかなと。

学び続ける業界だから、疑問を持つ人が伸びる

Q:最後に、これから入社を考えている方へメッセージをお願いします。

松井:この業界は、いつまでも勉強しなきゃいけない世界です。簡単な仕事だったらその場で終わっていくんですけど、そうではない。正直、困ってます(笑)。

でも、だからこそ「なぜこうなっているんだろう」と疑問を持つことが大事。疑問を持って、興味を持ち続けていれば、この業界ではやっていけると思います。「なぜこうなるのか」がわかってくれば「だからこうやればできる」という変化につながっていくので。

Q:日本化工機の監督はどんな人に向いていると思いますか?

頭を使うのが好きな人にとってとても面白い仕事だと思います。あと、コミュニケーションが好きな人も向いています。お客様や職人さんと話しながら、一緒に作り上げていく仕事なので。疑問と興味を持ち続ける。それが、この仕事を楽しくできるコツなのかなと思います。