40歳で診療放射線技師から現場監督へ。未経験者の武器になったコミュニケーション能力とは

40歳で診療放射線技師から現場監督へ。北川さんは配管の知識ゼロで飛び込んだ。覚えるべき技術は山ほどある。でも、それと同じくらい大事だったのが、お客さんとの関係づくりやコミュニケーション能力だった。雑談から信頼を築き、先回りして動く。前職で当たり前にやっていたことが、異業種でも武器になった。3年で現場を任されるようになるまでの歩みを聞いた。 

 診療放射線技師がプラント建設の世界に飛び込んだ理由

Q:北川さんは前職で診療放射線技師をされていたと伺いました。なぜ転職を考えたのですか? 

北川:きっかけは子どもの一言でした。前職では夫婦で診療放射線技師をしていて、当直も多かったんです。1ヶ月の3分の1くらいは、どちらかが夜いない状態で。子どもが毎日「今日は2人ともいる?」と聞いてくるようになったんですね。 

最初は「仕事だから仕方がない」と思っていたんですけど、毎日聞かれるので、これは転職を考えた方がいいのかなと。 

Q:同じ医療業界で転職する選択肢もあったのでは? 

北川:それも考えました。でも、クリニックや小さい病院だと技師は1人か2人しかいないことが多くて。そうなると今度は子どもが病気になった時に休めなくなってしまう。それでは転職する意味がないなと。 

40歳だったので、他業種に行くかどうかすごく悩みました。でも、人生で働く期間全体を考えるとちょうど折り返し地点だったんです。「今新しいところに行けば、踏ん張ればなんとかなるかな」と思って、夜勤がない仕事を探しました。診療放射線技師の国家資格があるから、最悪は戻れるという気持ちもありましたね。 

Q:入社してから、どのような仕事をされてきたのですか? 

北川:最初は石油プラントで配管の補修をしていました。錆で穴が空いてしまった配管に板を当てて埋めたり、バンドを巻いて漏れを補修したり。油の多いプラントだったので、油の掃除なんかも多かったですね。 

その後、化学メーカーの工場で定修(定期修繕)に入らせてもらいました。そちらでは配管交換がメインで、新しく配管を通したり、穴が空いた配管を丸ごと入れ替えたり。補修というより「新たに作る」感じの仕事が多かったです。 

今はその工場でメンテナンスの仕事をしています。機械周りの配管補修などがメインですね。 

重要なのは雑談から「相手を知る」こと 

Q:まったくの未経験からのスタートで、最初に戸惑ったことは何でしたか? 

北川:お客さんの組織構造を理解することですね。ここが一番戸惑いました。 

病院で働いていた時は、登場人物の多くは「先生」なんですよ。でもプラントのお客さんは違っていて、現場の担当者、その上の人、決裁権を持つ人、担当者ごとに役割や権限が全然違うんです。 

誰に何を確認すればいいのか、誰に了承をもらえば動けるのか。それがわからないと仕事が進まないんです。最初はそこが見えなくて苦労しましたね。 

Q:どうやってその壁を乗り越えたのですか? 

北川:とにかくお客さんのことを「知ろう」としました。どのような人なのか、どのような役割でどのような権限を持っているのか。それを把握できてきたら、コミュニケーションがどんどん取れるようになっていったんです。 

なるべく自分からお客さんに話しかけに行くようにしています。例えば、相手の時計を見て「アウトドア系の時計だな、キャンプとか好きなのかな」と思ったら、そこから切り込んでみる。出身地を聞いて「自分バイクでいろんなところ行くんですけど、そのあたり行ったことあります。良かったです」とか。サッカー経験者も意外と多くて、そういう話でも盛り上がったり。 

そういう雑談ができる関係になると、自然と仕事のことも聞きやすくなるんですよね。 

前職で培ったコミュニケーション能力と段取りの大切さ 

Q:前職の経験で、今の仕事に活きていることはありますか? 

北川:「伝達」の重要性ですね。これは前職でも今でも変わらないなと感じています。 診療放射線技師の仕事をしていた時、病棟から「病室でレントゲンを撮ってください」と電話を受けて、準備して向かっている最中にまた病棟から「まだですか?」と電話がかかってくることがあったんです。

病棟に向かった人が周囲に「今から病棟へ行ってきますね」と一言伝えておいてくれれば「もう行ってます」とすぐに返答できる。今の仕事でも同じだと思っています。「一言声をかけてくれれば違う対応ができたのに」ということは結構ある。だから自分は、事前に伝えることを意識しています。 

Q:仕事を進める上で、それ以外に大事にしていることはありますか? 

北川:段取りですね。自分は直前に急に仕事を振られて追い詰められるのが嫌なので、どんどん先回りして仕事を進めるようにしています。 

例えば、職人さんに部品(配管)を作ってもらう時、すぐ仕入れられる材料は全部一気に揃えちゃうんです。そうすれば職人さんも前もって作業を進められる。工事が始まる1週間前には作り終わっている状態にできれば、職人さんにも自分にも余裕が生まれます。途中で別の仕事を振られても対応できますし。 

Q:先に進め過ぎてお客さんから「やっぱり変えたい」と言われるリスクはないですか? 

北川:そういうこともあるので、前もってお客さんに「もう頼んで作っちゃいますね」と伝えるようにしています。「変えられないですよ」という意味も込めて。 

これをやるためには、お客さんとの信頼関係が必要なんです。さっき話した「相手を知る」というのも、結局はここにつながっている。信頼関係があって、事前にちゃんと伝えているからこそ、先回りして動ける。当たり前のことかもしれないですけど、それができていない人も多いなと感じます。 

任された工事を途中で離れる悔しさ。それでも「行っておいで」と言われた 

Q:3年目の今、仕事の仕方に変化はありますか? 

北川:今年に入ってから、教えてもらっている先輩が少し距離を置いてくれるようになった気がしています。言い方が難しいんですけど、「独り立ち」の状況を作ってくれているというか。前より関わってこなくなってきたので、ちょっと信頼され始めているのかなと感じています。 

聞いてないからわからないですけどね(笑)。でも、自分がどこまで仕事を進めているか、わからないことがあればすぐ聞くようにしているので、そういう姿勢を見てもらえているのかなと思っています。 

Q:これまでで一番大変だった仕事を教えてください。 

北川:初めて少し大きめの工事を任された時ですね。2〜3週間くらいの工事で、工事自体は順調で、あと1日か2日で終わるところまで来ていました。 

ただ、ちょうどその時期に、家族に不幸があって急に休みを取らなければならない状況になったんです。工事があと1日か2日で終わるというタイミングで。精神的にはかなり辛かったですね。 

Q:その時、会社の対応はどうでしたか? 

北川:会社に相談したら、温かく受け止めてもらえました。「家族のところに行っておいで。こっちはなんとかするから」と言ってもらえて。周りのみんなも「早く帰りなよ」と声をかけてくれて、心強かったです。 

ただ、自分としては初めて任された工事だったので、最後まで自分で完結させたかったという気持ちもあって。複雑でしたね。結果的に、引き継ぎをして工事自体は完結できたんですけど、いろんなことが重なった時期だったので、一番しんどかったです。 

仕事はきっちり。でも「行っておいで」と送り出してくれる 

Q:チームや会社の雰囲気はどうですか? 

北川:みんな仕事はきっちりやるんですけど、遊ぶのも好きな人が多いですね。自分が旅行に行く話をしたら興味を持って聞いてくれたり、他の人も遊びに行った話をしてくれたり。 

子どもの病気とか、急な迎えが必要になった時でも「行ってきていいよ」「工事まだ終わってなかったらやっとくから」と言ってもらえる。さっき話した、初めて任された工事の時も「なんとか調整するよ」と言ってもらえた。そういう部分で、みんな温かいなと感じますね。 

Q:経営層との距離感はどうですか? 

北川:入社してそんなに経っていない自分の話も聞いてくれますし、その考えを受け入れてくれる。いろんなところに気を配って動いてくれている印象です。寛容というか、器が大きいなと感じています。 

「直す」が好きなら続けられる。自分で考えて動きたい人に向いている 

Q:この仕事のやりがいは何ですか? 

北川:自分は家でも物を修理したりするのが好きなんです。その延長線上で仕事ができているのかなと感じています。壊れたものを直す、という作業が好きなんですよね。前職の技師と今の仕事が人生の中で「二本柱」になればいいなと思って頑張っています。 

Q:最後に、入社を考えている方へメッセージをお願いします。 

北川:仕事をきっちりやっていれば、基本的には何も言われないですね。常識の範囲内ではありますけど、自分で考えて動ける環境だと思います。 

自分は今ちょっと髪の色を変えているんですけど、それも何も言われなかったです。「いい色ですね」って言われたくらいで(笑)。 

40歳で異業種から転職して、最初は戸惑うことも多かったです。でも、相手を知ろうとすること、伝えるべきことをちゃんと伝えること。それは前職でも今でも変わらない。働く期間の折り返し地点だと思えば、踏ん張ればなんとかなります。自分で考えて動くのが好きな人には、向いている仕事だと思いますね。